ひとつだけちょうだい
ひとつだけ
ひとつだけ
子どものころに教科書で読んだお話。
戦時中、物資がなくて食べ物がなくて、いつもお腹を空かせていた女の子。
ゆみこはたくさんちょうだい、とは言えず。
でも欲しくて。
ひとつだけ、ひとつだけちょうだいと言う。
戦争の悲惨さを伝える物語として長らく小学四年生の教材となっているようです。
上の娘が四年生で、毎日音読の宿題で聞いてます。
親になるとこうやって自分が子どもだった頃に触れたものに再会することがあるんですね。
今西 祐行
岩崎書店
1995-04
ここからは捻くれた感想なので閲覧注意!
親として大人として思ったけど言えない気持ちをぶちまけます。
子どもには伝えないよ!
ゆみこは山ほどちょうだい全部ちょうだいとは言わないかわいそうな子って言うけど、自分のぶんを食べた後に「ひとつだけちょうだい」って言ってるんだよね。
母親は自分のぶんから更にひとつだけ分けてあげる。
まあ、わかるよ。
わたしだって母親だからさ、子どもが欲しいって言うなら分ける。
ゆみこは欲しがりすぎると他人の分け前が減るってことがわからないような幼女だしね?
そりゃ出征前のお父さんの「おじぎり」もちょうだいって言う。
お父さんもお母さんも、戦争に行く直前、これきり娘には会えないかもしれない(事実、お父さんは帰って来られなかった)ってときに泣き顔なんて見たくない。
娘がおにぎりを頬張ってニコニコしてる姿を目に焼き付けたい。
だから「ひとつだけ」「 ひとつだけ」と言って結局全部ゆみこがおにぎりを食べちゃっても「いいかげんにやめなさい」とも「お父さんのぶんが無くなるでしょ」とも言わなかった。
食糧難でお父さんも腹ペコだろうに。
いつもは芋やかぼちゃ、薄い粥の生活で、出征前の最後の心尽くしのおにぎりだったのに。
きっとお母さんは無理して、これで会えなくなるかもしれない夫におにぎりを握ったんだと思うんだ。
小さい女の子にそのへんをわかってもらうのは無理だってわかってる。
おにぎりを「おじぎり」って言うくらい幼いんだ。しょうがない。しょうがないよ。
だけどさ、ゆみこってぜんっぜん「ひとつだけ」じゃなーい!!
たくさんちょうだいって言わないけど、最終的にはけっこう貰ってる。
ひとつだけで満足してない。
次からつぎへと「もっと」貰ってる。
我慢強くないし、けっこう強欲。
かわいそうな子?
そうかなあ?
そりゃいつもお腹を空かせてたんだから、ひもじくってかわいそうな子だけど。
時代がどうとか関係なくお腹はへるだろうけど。
けっこう図々しく要求してるよ。
おにぎりをひとつ残らず食べ尽くしちゃうって…
3歳くらいでも、お父さんやお母さんに「どうぞ」しないもん?
ひとくちでも分けてあげようって思わないか?
おしゃべりが上手できない小さい子でも、わけあっこするよね?
それって現代が飽食の時代だからなの?
いつでもお腹いっぱいに食べられるから、その余裕があるからみんな「どうぞ」してくれてるの?
ゆみこに思い遣りが無いってわけじゃなく、戦争の悲惨さが、おにぎり独り占めって事態を引き起こしたの?
だとしたら、戦争って、ホントに人を狂わすね。
父ちゃんにもおにぎり食べさせてやれ。
コスモスに感動するより、おにぎりで頭がいっぱいになる。
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