ゼロからフェミニズムを学べるかな?と思って読んでみた。
『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』
会話形式の対談本で、頁下部に注釈がついている。
横書き。
前半は全共闘世代の上野千鶴子の青春時代が語られ、そのあとは社会と女性の関係性の変遷について語られる。
わりと、恨み節。
上野千鶴子にとってフェミニズムは私怨なのだという。
田房永子にとっても怨みや怒りの発露の一環なのだと感じた。
イラストも多く読みやすかったけれど、ふたりから放たれる負のエネルギーが、正直しんどい。
母親への不平不満、社会や男性への恨みつらみ、意見や思想を異にする人間への蔑視、透けてみえる選民意識……
女性の権利を勝ち取るため、男尊女卑の世界を変えるため、頑張ってくれた先達のおかげで今がある。
その点について異論のある女性は少ないと思う。
それなのにフェミニストや女性の権利を守ろうと運動する人たちを遠巻きにしてしまうのは、怨念たっぷりの攻撃性に恐れおののいてしまうからだ。
男性の既得権益と排他性と暴力を否定しながら、口汚く罵る。追い詰める。屈服させたと拳を突き上げる。
こ、こわ〜
そういうことが聞きたいんじゃなかったのに。
フェミニズムの観点から女性の権利の歴史や、ジェンダー特性や、ウーマンリブ運動の功罪などが語られるんじゃないか、って期待してたのに……
ただ、べつにこれは「女だから」ではない。
当事者がなんとなくで語るから、こうなっちゃったんだと思う。
「運動家」「活動家」の宿命なのかもしれない。
変革したい…相手を打ち倒したいって、どうしても好戦的な態度になっちゃうんだろう。
同志でかたまって煮詰まっている集団独特の雰囲気は、外部からはかなり異質に見えてしまう。
言っていることはところどころ「そうそう!」「わかる!」と首肯く部分もある。
上野千鶴子は親世代で、田房永子は同世代。(年齢いっこ違うだけ)
そういうこともあったよね、って思ったりもする。
だけど、そうでもないけど?とも思う。
かなり、思う。
読み物としてはそれなりに興味深い内容だった。
フェミニズムがどうというより、語っているうちに話すふたりから滲み出る漏れ出すはみ出る人間性が面白い。
その面白い部分はしんどい部分でもあるけども。
フェミニズムについて知りたい場合は、一線を引いた人が俯瞰で説明してくれる方がわかりやすいんじゃないかな。