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Channel: [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]
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一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ 遠野なぎこ

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悲鳴のような文章。
文字から涙や血が見えるよう。

被虐待児だった著者は、明けても暮れても母をおもう。
殺してやりたいほど憎みながら、それでも愛してほしがっている。

タイトルに
一度も愛してくれなかった
とつけてしまうほど、その渇望は深い。

後半からは奔放な恋愛遍歴が綴られるが、
一度も愛せなかった
とあるように、その恋愛はすべて刹那のものだった。

愛がわからなくて、恋をしても愛せない。
縋ってくる男たちを突き放す。

男たちは欲しかった母の愛の代償。
愛を欲しがる姿は過去の自分自身。
だからこそ、残酷に、不必要なほどバッサリと、心の斧をふるう。


お腹の上に乗っかってくる愛猫たちのぬくもりと重みだけが彼女にとって確かなもの。


テレビで摂食障害や母との不和を告白した反響 
ーわたしも母とうまくいかない…わたしも母を憎んでいる…わたしも眠れない…わたしも吐いてしまう…わたしも鏡が見られない…わたしも生きていたくない…わたしも死んでしまいたい…ー

それらに、
あなたたちは悪くない。あなたのせいじゃない。
と思ったことが反転し、
ああそうか、わたしもそうなんだ。わたしは悪くないんだ。
と客観視できたことで、それまでがんじがらめだった鎖が少しずつほどけていった。

しかし、摂食障害は完治しないのだという。
コントロールしていても、ふとしたきっかけで食べ吐きしてしまう。

その摂食障害すら、母の導きによるものだったという事実。

普段はけして見せないおだやかな優しい顔で、吐いてみたら?と勧めた母。
ぬるま湯飲むと吐きやすいよ、とアドバイスしてくれた母。



今はその母と距離をとっている。
それでも、自分のスケジュールを記したメールを送っている。
必ず最後に返信はいらないと付け加えて。



一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ (新潮文庫)

一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ (新潮文庫) [文庫]

遠野 なぎこ

新潮社

2016-03-27




内容紹介
18歳で私を身ごもった母。「お前は醜い」と私に言い続けた母。育児を放棄し不倫に走る母……。そんな母に認められたくて子役の仕事を始めた私は、やがて女優「遠野なぎこ」になった。思春期を迎え、増える体重に悩む私に悪魔がささやく。「吐けばいいのよ」。悪魔は、母の顔をしていた――。摂食障害に苦しみ、愛情を求めてさまよった壮絶な体験を綴る。圧倒的共感を呼んだ自伝的小説。

出版社からのコメント
「愛が、よくわからない」。
だって、母親にさえ愛されたことのない私が、男の人から愛してもらえるわけがないじゃない?
近づくと傷つけられる。傷つけられると傷つけ返してしまう。
そんな関係性はもう、母親だけで十分だ。
―――遠野なぎこが全身全霊で綴った母の罪、我が恋のあやまち。

親に十分な愛情をもらえずに成長したゆえに、恋にも家族にもうまく向き合えず、毎日をもがくようにして生きている女性は、あなたの隣にだっているはずです。
親への愛と憎しみは紙一重。憎くても憎くても、母への愛を断ち切ることができずに苦しむ娘。そんな娘は、誰かに恋し、誰かを愛することにも高い壁ができてしまう。
不器用で、痛々しくて、馬鹿正直な彼女のことを、世間は後ろ指さして嘲笑する。 「ほら、あの子が、誰とでも寝る女優だよ」と見て知ったように言う。
―― 遠野なぎこさんには、人には言えない何かがある。そう感じて、本書の執筆を依頼しました。 
彼女は悩んだ末、すべてを書くことを決断してくれました。 そこに書かれていたことは、想像を超える壮絶な母と娘の愛憎物語でした。
氷のような家庭環境で育った「なぎこ」はどうやって母と決別できるのか? 
本書を書きあげたことは、遠野さんにとって、母への愛と憎しみを断ち切るため、少女時代の弱かった自分を葬るための通過儀礼となりました。


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