長い記事になりそうだぜぇ〜〜と言いましたが、予想より長くなりそうなので記事を分けます。
まずはロングインタビューについて。
記事全文を転載するのもどうかと思うので、わたし的に抜粋します。
ロングインタビュー
川原泉を知る6つのキーワード
1、マンガ 一生の友達とともに
小さい頃は洋の東西を問わず昔話がすきだった。漫画もたくさん購読していた。
雑誌をバラして作品ごとに製本した自前のコミックスを作成、今も本棚に並んでいる。
サイレント・マイノリティー…人から“変わってる”と言われても悪口だと思わず“個性的”と変換。そんな個性的仲間がMくんだった。
大親友Mくんとは今も仲良し。母親のように「早くしなさい!」と言われている。
乙女ちっくでない年上男性との恋。同級生はガキっぽくて大嫌いだった。
2、食べ物 上手にではなく美味しく描く
食べるのが好きだから描くのが好き。“上手に描く”のは諦めて“美味しそうに描く”のを頑張っている。丸ペンじゃなくてGペンを使うのがコツ。
咀嚼するときのオノマトペ〈もぎゅもぎゅ〉は普通に使っていた。しっかり奥歯で噛みしめるイメージ。牛が臼歯でうにゅ〜ってするみたいに。
3、野球とスポーツ 今、カーリングが好き
甲子園の面白さには小学3年のときに目覚めた。でも負けて泣いたり、砂を持って帰るのってもういいんじゃないかなと。1番好きじゃなかったのが、昔の叫ぶみたいな選手宣誓。もう少し肩の力を抜いてもいいですよね。
「銀のロマンティック…わはは」を描いたきっかけの1つはサラエボオリンピックアイスダンスのトービル&ディーン組の『ボレロ』で全ジャッジが芸術点6.0満点だったこと。泣いちゃいました。
セリフやモノローグで気をつけているのは七五調。三三七拍子とか。字余りだと気持ち悪い。リズム感がいい言葉を使いたい。
今はカーリング。ソチ五輪の前からハマってます。
4、SF かわいそうなロボットに惹かれます
「アンドロイドはミスティークブルーの夢を見るか?」は竹宮惠子作「私を月まで連れてって!」に憧れて描きました。
スタートレックやアイザックアシモフが好き。
物言わぬ健気なロボットに弱い。
指宿を描いているのは「愚者の楽園」だけ。あまりに自分に身近だと恥ずかしい。田中芳樹先生の大ファンだけどファンレターを書けと言われたら緊張のあまり気絶してしまう、それと同じです。
聖ミカエル学園のサイレント・マイノリティー。
脳の8割が恋愛で占められているというようなキャラは理解できない。セリフが思いつかない。
「我が道を行く」ってかっこいいけど怖い。周りにどう思われるか不安で。でもそういう人って世の中に結構たくさんいる気がします。
5、哲学 プラグマティズムがすべての基本
哲学は全然得意じゃなくて、本を読んでも咀嚼できません。引用は、ストーリーにスパイス的な変化を加えようと思っているだけ。
ただ1つだけ、“プラグマティズム”実用主義・実際主義はわたし(川原泉)の考え方の基本にあるかもしれません。哲学も実際の生活に役立ってこそ意味があるでしょう。
マイノリティーとか難しい思想ではなくて、ただ“完璧でない男性”を描きたかった。完璧でないから人間。自分が理想的 人間でないのに、それを相手に求めるのはおかしい。〈お互い様だよね〉っていうのがいいんじゃないでしょうか。
切なさが御涙頂戴にならないように気をつけている。
恋のセリフ。
“日常で使う言葉”を心がけている。「お前はそのセリフ、普段言ったことあるのか?」「いや、ない」と自問自答。
6、歴史 今、町人が面白い
むかしは年上の男性がかっこいいと思っていたけれど、自分が年をとってその誤解に気づいた。それで今は高校の同級生を描いている。
今後は作画のフルデジタル化を目論んでいる。
「これからわたしは武士になる」を完結させたい。その後は江戸時代の町人…カーリング…どちらがいいかな。
川原泉とプラグマティズムについて
プラグマティズムの意味…
一種の功利主義哲学。知識が真理かどうかは、生活上の実践に利益があるかないかで決定されるとする。実用主義。
哲学用語は説明を読んでも咀嚼できない。
(インタビューの川原泉に親近感湧くけど、本当はわたしと違ってちゃんと理解しておられるんだろうなー)
プラグマティズム、わたしの感覚で言うと、机上の空論より現実を見て、地に足をつけて目の前の問題に取り組もうぜ!って考え方だと思っている。
事実は事実として受け入れて、さあ、そこからどうする?
って考え方。
というか、わたしの基本的な思想回路がそうなってる。
そして、それは川原泉に影響を受けているところが多分にあるんじゃないかな、って思っている。
変な人って言われるのを悪口じゃなくて「個性的」と捉える、とかね。
わたしもどっちかというと変わり者っぽい扱いをされがちだった。
だから、川原泉的な生き方で呼吸がラクになったひとりなんだ。
や、凡人なんだけど。
変人ってほど個性的でもないんだけどね。
欠落していたり、完璧じゃなかったり、うまくいかなかったり、かっこ悪かったり、ダサかったり。
現実ってままならないことばかり。
勉強も運動もできないし、友達もたくさんは作れないし、胴長短足でつまんない顔してるし、お金持ちの生まれでもないし、オシャレな家でもないし、気の利いたセリフも言えないし、むしろ空気が読めなくて凍りつかせちゃうし………
そんな現実を前にして、落ち込んでたってしょうがないよね。
ブスが美人になれるわけじゃないし、いきなりリア充にもなれないんだから。
悩んだって解決しないなら、悩む時間が無駄。
暗く沈んでいたからって事態は好転しない。
それなら、ありのままの現実を受け入れて、その中でやれることをやればいい。
気持ちの問題で明るく楽しく過ごせるなら受け止め方を変えればいい。
ニヒリズムというか、諦念っていうのはある。
ジタバタしたってどうしようもないことってあるから。
変えられない不条理や、虚しいこと辛いこと苦しいことって実際にある。
そこはもう、諦めることも肝心なんだと思う。
どうしたってどうにもならないことで苦しんだり、理想を追い求めたり…それって現実逃避だよね。
正しい方向を向いていない努力は自己陶酔しているだけだと思うんだ。
水も飲まないでうさぎ跳びするような気合いと根性のスポーツ練習、残業代が出ないのに睡眠不足のまま働き続けること……そういう意味不明な精神至上主義って頑張ってるフリをしているだけだと思う。
本当には現実に向き合っていない。
ちゃんと向き合うべきものに直面したくないから、別の苦労で誤魔化している。
悲しいことがあったら泣くこともあるけど、ご飯を美味しく食べられる幸福や友だちと笑いあえる幸福をしっかり抱きしめたい。
川原泉のプラグマティズムって、そういうことなんじゃないのかな?って思う。
まだ買ってない