ちぐはぐで薄暗くて安っぽい、「主婦」という単語の嫌なイメージの側面そのもののような小説だった。
『主婦病』
夫源病のような、主婦ならではの病…或いは心の闇について描かれているのかな?と思って読み始めた。
過度にポエミーな文章、無理矢理詰め込まれたように不自然な性的エピソード。
登場する女たちはだれもが唐突で不合理。
連作集のそれぞれの短編もとっちらかっている。
心が成熟しないまま、カラダも成熟していない(性的に満足できていない)のに、いつの間にか十把一絡げな「主婦」になってしまった、おばさんになってしまった女たち。
少女漫画の点描と星とレースと花をかかえたまま、似合わないポルノの上っ面だけをなぞっている。
しかも、そこに相手は不在。
強く抱きしめてくれる腕も見つめてくれる熱い瞳も無い。
むなしいひとり芝居。
気持ちも体も持て余して、自分で自分がわからない。
わからないまま混乱している。
その混乱が、整理されないまま投げ出されているようだった。
夢の具現化のような「金髪の男」辻くんには、まったく現実感が無い。
主婦の白昼夢のような存在。
装置でしかない。
スーパーで売れ残って値引きシールが貼られたパサパサのスポンジと表面の乾いたあぶらっこいクリームのケーキのような、不快な甘さ。
陳腐で稚拙。
かなしいほど薄っぺらい。
単行本にならずに読み捨てられるレディースコミックのような、むなしさ。
それが「主婦病」なのだ、というのなら、ぜんぶ含めてすごく上手だと思う。